みぐるみん

身ぐるみ脱ぎ捨て自由に生きる。おひとり様引退ナースが人生でやり残したことをやるために創った空間です。

25年ぶりに乗った自転車で約70km走るという冒険

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永遠かと思うほどの自粛期間が続いている。

病んで引きこもっていた延長線上にあるコロナ自粛だったため、

3年前から、ひとりロックダウンという状況に陥っている。

コロナが発生する直前、すでに運動不足の私を、

遠方にいる若い友人が「しまなみ海道」の旅に誘ってくれた。

 

出発前日の20時ぐらいに決定し、詳細をよく飲み込まないまま

回らない頭でワクワクしつつ2泊3日のプチ旅行に飛び出した。

そういえば、彼女はサイクリングコースも楽しめるよ、と言っていた。

レンタルでちょこっと乗って景色を楽しむんだろうなと思っていた。

だから想定していなかったわけじゃない。

 

かろうじてママチャリに乗れるぐらいの格好にした。

スカートじゃないっていう程度の。

突然のことで荷物がつい膨れ上がる。

何も考えず買い物に使うキャンプ用のキャリーカートで出発した。

たまたま二人とも、綿密な計画を立てることが苦手なタイプだった。

何とかなるんちゃう?まあ、行ってみて考えよう〜!みたいなノリで。

梅雨の晴れ間のような、「うつ」の晴れ間の危険なハイテンション。

広島県尾道駅改札で待ち合わせをした。

手を振りながらやってくる彼女の姿を見て、私は悟った。

バックパックひとつにTシャツにスリムなパンツとスニーカー。

まさか。。。しかし、私を見ても彼女は驚かなかった。

何だ、やっぱりちょっと走るだけってことかな。考えすぎ。

だって、私は彼女のお母さんと同い年。いくらなんでも考えすぎ。

 

最初の島は、小さな船にちょこっと乗ったらすぐ着いた。

私は尾道駅で買った、ご当地のレトロなパンを食べながらご機嫌だった。

島に降りて、路面の案内通りにおしゃべりしながら歩く。

歩いても歩いても進まない。無言で歩いてもやっぱり進まない。

待ち合わせが午後だったから、日没までそんなに時間はない。

もちろん宿も予約していない。どこまで行けるかわからないからということで。

さすがに能天気な二人もだんだん不安になった。

スマホを睨みながら歩く彼女に着いていき、

たどり着いたのは閉店間近のレンタサイクルコーナー。

状況に合わせてどの島でも返却できるから、しんどくなったらやめればいい。

歩くより驚くほど速い!すごいこれ速い!チャリってすごい!

 

途中返却して、またどこかで借り直すと保険料とかもかかってコスパが悪い。

若くてしっかり者の彼女とケチな私にとってそこは重要だった。

運動療法的な旅だとしても、無職の身で贅沢はできない。

 

結局…最終地点の四国[今治]まで完走。

 

初日は筋肉痛になる前の足が震えて脱力した状態のまま走った。

とにかく、なるべく止まらずにどんどん進んだ。

止まって足をつくと膝カックンになってしまって危険だったから。

最終日は土砂降りになった。コンビニで買った雨ガッパを着込んだ私と

ゴミ袋を被せまくった荷物が、最終の長い橋を渡る姿は笑える光景だったらしい。

私は苦しすぎて、号泣しながら走った。子供がしゃくりあげて泣くぐらいの涙が出た。

若くて軽装の友人は見えなくなるほど先を走っていた。

合流した時、彼女は言った。

「もう真っ暗だし、雨で泣いてるの目立たなくて良かったですね」

彼女らしい慰安の声かけだった。

 

行き当たりバッタリの3日間の壮絶さを表現するとすれば、

本一冊ぶんぐらいの量になってしまうだろう。

ここでやめておく。

 

旅の後、筋肉痛が癒えてから、日常に自転車を取り入れるようになった。

25年ものの愛用品といっても、ほぼインテリアとして連れ回っていただけの

折り畳み自転車は、近所をぷらっとする程度で酷使はできない。

そこで、新しく自転車を買った。

すると、自転車ネタ繋がりで新しい友達ができた。

そして何とその女の子は、しまなみを走った彼女と

同年代で、しかも名前が一文字違いだった。

その新しい友人が、私の一番苦しい時期を支えてくれた。

 

人生とは本当に何がどう転んで、どこでどう繋がっていくか・・・

自分の小さなカオス頭では想像もつかないことが繰り広げられていく物語。

このありえないスタイルで完走したことには、ちゃんと意味があった

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 すれ違うロードバイクの海外の方から、確実に「コンニチハ」と言われた。

地元のおばちゃんと間違われたようだった。

道の駅で出会った同年代ぐらいのご夫婦は、初めてのロードバイクで、

ベテランの人に混じって走るのが気後れして…少し恥ずかしいと思っていたらしい。

私のこのスタイルを見て、「自信つきました!勇気をもらいました!」

と感謝された。記念に、私の走る姿を動画撮影してくださり爽やかに別れた。

 

鬱々な日々で忘れていた。

人を楽しませて笑ってもらうこと。

それで誰よりも一番楽しくなるのは、いつも自分だったってことを。